コラム

  1. HOME
  2. コラム
  3. 特報!ルーヴル美術館「レオナルド・ダ・ヴィンチ」展(没後500年記念展)始まる。その内容を現地からいちはやくレポートします

特報!ルーヴル美術館「レオナルド・ダ・ヴィンチ」展(没後500年記念展)始まる。その内容を現地からいちはやくレポートします

 今年2019年がレオナルド没後500年にあたるため、東京造形大学でおこなっているプロジェクト以外にも、世界各地で記念行事がおこなわれている。なかでも最大の催しが、パリのルーヴル美術館でおこなわれる、その名もシンプルな「レオナルド・ダ・ヴィンチ展」だ。

 10月24日からの一般公開に先駆けて、22日にプレス向け内覧会があった。夢の実現展の監修者も出席したので、現地からレポートをお届けする。

 「これまでで最も多くのレオナルド作品が揃う」との触れ込みだったが、何が実際に展示されるのかは直前まで明らかにされていなかった。そのため内覧会で初めて内容が分かったのだが、たしかにこれまで一会場でこれほど多くのレオナルド作品を見たことはない。素晴らしい体験なのだが、長年かけていろいろな都市に旅しては実作品を観てきた身としては、自分がかけてきた時間と労力がチャラにされたようで複雑な気持ちもなくはない。

 ルーヴル美術館自身が所有する<ラ・ジョコンダ(モナリザ)>(←これだけは通常の特別展示室)、<岩窟の聖母>(パリ版)、<ラ・ベル・フェロニエール>、<聖アンナと聖母子>、<洗礼者ヨハネ>はもちろんのこと、<聖ヒエロニムス>、<ブノワの聖母>が来ていて、帰属問題を抱える二枚の<糸巻きの聖母>(ランズダウン版とバクルー版)、<音楽家の肖像>も展示されている。

 「出るのではないか」とずっと噂されていた<サルヴァトール・ムンディ>(史上最高値で落札されたもの)は、作者の表記をめぐって揉めたあげく、最後の最後で出展が取りやめになったようだ。そのかわり、それとまるで双子のようによく似ている通称ナポリ版<サルヴァトール・ムンディ>が展示されている。それだけでも嬉しいのだが、もし二枚が隣に並んで展示されていたら違いを確認する作業が楽なのに、とやや残念に思う。

 その他にも、弟子を含むレオナルド派の作品や、<アンギアーリの戦い>の中心部分のほぼ同時代の模写か工房作である<ターヴォラ・ドーリア>が、ミケランジェロの<カッシーナの戦い>のアリストーテレ・ダ・サンガッロによる同時代模写と並べてあって、実現しなかった五百人広間での「世紀の対決」を演出している。さらに<イザベッラ・デステ>のデッサンのそばにイザベッラのテラコッタ胸像があったりと、数の多さもさることながら、比較考察やモデル同定のうえでも非常に有効な展示方法がとられている。

 とりわけ、全展示絵画と、展示できなかった作品でも入手できるものは赤外線撮影写真を原寸大で展示しているのが今回の展覧会の最大の特徴だ。これほど多くの赤外線写真が主役のように展示されている展覧会は初めてだ。ちょうど実現展監修者も、レオナルド派作品の帰属問題の調査用に、科研費で赤外線撮影用カメラを購入して間もないが、今回のルーヴル展は、絵画の帰属調査の最新トレンドが赤外線撮影であることをはっきりと示す展覧会ともなっていた。

 赤外線写真では、彩色層のしたに隠れている下絵を見ることができるため、夢の実現展プロジェクトでの復元作業に大いに役立っている。こちらも乞うご期待!


図1: ピラミッド入口の下が、レセプションの会場となっていた。この後、マクロン大統領が登場。
図2: 展覧会場の様子。奥に見えるのは、レオナルドの一番弟子マルコ・ドッジョーノによるものと考えられている<最後の晩餐>の模写。

関連コラム